はじめに
FX自動売買のEA(Expert Advisor。MT4/MT5などで使われる自動売買プログラム)の販売ページで、最も目立つ場所に置かれることが多い数字が勝率です。
勝率90%。10回のうち9回勝つ。数字だけ見ると、かなり優秀なシステムに見えるかもしれません。
ただ、ここで一つ問いを置きます。勝率90%のEAは、必ず利益が出るのでしょうか。
答えは「勝率だけでは分からない」です。勝率は「何回勝ったか」しか見ていません。1回あたりいくら勝ち、いくら負けたかという金額の情報が、勝率には入っていないからです。
この記事では、次の3点を見ていきます。
- 勝率90%でもトータルで負ける仕組み
- 損益がプラスになる勝率の求め方(損益分岐の勝率)
- EA販売ページで勝率を見るときに確認したいこと
勝率90%でも負ける数値例
まず、極端な例で直感をつかみます。
あるEAが10回取引して、9勝1敗だったとします。勝率は90%です。
- 勝ちトレード: +1万円 × 9回 = +9万円
- 負けトレード: −20万円 × 1回 = −20万円
トータルは −11万円 です。勝率90%なのに、収支はマイナスになりました。
これは作り話のような例に見えますが、構造としては珍しくありません。「小さく何度も勝ち、たまに大きく負ける」タイプの戦略は、勝率が高く見える一方で、1回の負けがそれまでの利益をまとめて消すことがあります。
逆のパターンもあります。勝率40%でも、勝つときが大きければトータルはプラスになります。
- 勝ちトレード: +5万円 × 4回 = +20万円
- 負けトレード: −1万円 × 6回 = −6万円
勝率40%で、トータルは +14万円 です。
つまり、勝率単体では優劣を判断できません。勝率は、平均利益と平均損失とセットで初めて意味を持つ数字です。
損益がプラスになる勝率の求め方
勝率と平均損益の関係は、式で整理できます。
勝率を p、平均利益を W、平均損失の絶対値を L とします。1回の取引あたりの期待損益 E は、次の式で表せます。
\(E = pW – (1-p)L\)
右辺の第1項は勝ちから得られる平均的な利益、第2項は負けから生じる平均的な損失です。期待損益がプラスなら、同じ条件で取引を繰り返したときの平均損益もプラスへ向かいます。ただし、短期間の利益を保証するものではありません。
トータルの損益がちょうどゼロになる勝率を求めるには、E = 0 と置きます。
\(pW – (1-p)L = 0\)
これを p について解くと、損益分岐の勝率は次のようになります。
\(p^{*} = \frac{L}{W + L}\)
たとえば、平均利益と平均損失が同じ(W = L)なら、損益分岐の勝率は50%です。勝率が50%を超えていれば、トータルはプラスに向かいます。
一方、先ほどの例のように平均利益 +1万円・平均損失 −20万円なら、
\(p^{*} = \frac{20}{1 + 20} \approx 0.952\)
勝率95.2%を超えないと、トータルがプラスにならないことが分かります。勝率90%では足りません。
ここでは計算を単純にするため、手数料やスプレッドを除いています。取引コストを含めると期待損益はその分だけ下がり、損益分岐に必要な勝率も高くなります。
この式から言えることはシンプルです。
- 平均損失が平均利益より大きいほど、必要な勝率は高くなる
- 「勝率90%」が優秀かどうかは、平均利益と平均損失を見ないと判断できない
販売ページで確認したいこと
EA販売ページで高い勝率を見たときに、あわせて確認したいのは次の項目です。
| 確認項目 | 見る理由 |
|---|---|
| 平均利益・平均損失 | 損益分岐の勝率を計算するため |
| 最大損失(1回あたり) | 1回の負けの大きさを見るため |
| 取引回数 | 勝率の信頼度を見るため。少数回の勝率は偶然で動く |
| 最大ドローダウン | 損失が集中したときの落ち込みを見るため |
| ナンピン・マーチンゲールの有無 | 損失を先送りすると勝率が高く見えることがあるため |
特に取引回数は重要です。10回中9勝の勝率90%と、1,000回中900勝の勝率90%では、数字の重みが違います。取引回数が少ないうちは、勝率もたまたま高く出ることがあります。
また、含み損を決済せずに抱え続ける設計のシステムでは、負けが確定しないぶん勝率が高く見えることがあります。勝率が高く、連勝が多く、それでいて保有ポジションの説明が少ない場合は、含み損の扱いを確認しておきたいところです。
まとめ
- 勝率は「何回勝ったか」だけの数字で、金額の情報を含まない
- 平均利益・平均損失とセットで見て、初めて損益の見通しが立つ
- 損益分岐の勝率は L ÷ (W + L) で計算できる
- 高勝率のEAを見たら、最大損失・取引回数・含み損の扱いを確認する
勝率が高いことは、それ自体は悪いことではありません。ただ、勝率だけで判断すると、数字の見え方に引っ張られます。「その勝率は、どんな平均損益の上に成り立っているか」まで確認するのが、この記事で紹介したい見方です。
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※本記事は特定のEA・商品の購入可否を示すものではありません。数値例はすべて説明のための架空の例です。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

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