最大ドローダウンとは?FX自動売買で見るべき理由

投資・トレード

はじめに

100万円で始めた運用が、最後に130万円になったとします。結果だけ見れば30%の利益です。

しかし、その途中が「100万円 → 120万円 → 90万円 → 130万円」だったなら、運用者は一度、直前のピークから25%の下落を経験しています。最終利益だけでは、この途中経路は分かりません。

最大ドローダウン(Maximum Drawdown、MDD)は、資産が過去のピークから最大でどれくらい落ち込んだかを表す指標です。FX自動売買やEA(Expert Advisor。MT4/MT5などで使われる自動売買プログラム)では、勝率やプロフィットファクター(PF)と並べて確認する必要があります。

最大ドローダウンの考え方

時点 \(t\) の資産額を \(E_t\)、その時点までの最高額を \(H_t\) とします。

\(\displaystyle H_t = \max_{0 \leq s \leq t} E_s\)

時点 \(t\) のドローダウン率は、次のように書けます。

\(\displaystyle D_t = \frac{H_t-E_t}{H_t}\)

最大ドローダウンは、この \(D_t\) の最大値です。

\(\displaystyle \mathrm{MDD} = \max_t D_t\)

例えば、資産が次のように推移したとします。

100万円 → 120万円 → 90万円 → 110万円 → 130万円

最も大きな落ち込みは、120万円から90万円への30万円です。直前ピークの120万円を基準にすると、

\(\displaystyle \frac{120 – 90}{120} = 25\%\)

となるため、最大ドローダウンは25%です。初期資金の100万円ではなく、下落直前のピークを分母にする点が重要です。

資産曲線上の直前ピーク120万円から谷90万円までの下落を示し、最大ドローダウン25%を図解したグラフ
資産曲線上の直前ピーク120万円から谷90万円までの下落を示し、最大ドローダウン25%を図解したグラフ

下落率と回復に必要な利益率は対称ではない

25%下落した後に25%上昇しても、元には戻りません。100が25%下落すると75になり、そこから25%上昇しても93.75だからです。

下落率を \(d\) とすると、元のピークへ戻るために必要な利益率 \(r\) は次のようになります。

\(\displaystyle r = \frac{d}{1-d}\)

最大ドローダウン 元のピークまでに必要な利益率
8% 約8.7%
25% 約33.3%
45% 約81.8%

最大ドローダウンが大きくなるほど、回復に必要な利益率は急速に大きくなります。これは、最大DDを単なる「一時的なマイナス」として扱えない理由の一つです。

最終利益だけでは運用の難しさが分からない

例えば、次の2つのEAがあったとします。

EA 最終利益 最大ドローダウン 印象
A +30% 8% 比較的なだらかに見える
B +50% 45% 利益は大きいが、途中の落ち込みが大きい

最終利益だけならBが上ですが、最大DD 45%は、直前ピーク100万円に対して55万円まで下がる規模です。元のピークへ戻るには、その後約81.8%の利益が必要になります。

この下落を実際に許容できるか、必要証拠金を維持できるかは、最終利益とは別の問題です。最大ドローダウンは、利益へ到達する途中で、どの程度の下落を経験したかを表します。

勝率やPFだけでは分からないこと

勝率は勝った取引の割合、PFは総利益を総損失で割った値です。どちらも、損失が発生した順番までは表しません。

勝率90%でも、10回に1回の負けが非常に大きければ、最大DDは大きくなり得ます。PFが同じでも、負けが分散している場合と、連敗として集中する場合では、資産曲線の落ち込み方が変わります。

同じPF 2.0でも、次のような違いがあります。

  • 小さな負けを挟みながら、なだらかに増える
  • ある時期に大きく落ち込み、その後に回復する

総利益と総損失が同じならPFは同じでも、取引順序が違えば最大DDは変わります。PFと最大DDは、同じ成績表の別の側面を見ています。

残高ドローダウンと有効証拠金ドローダウン

EAの成績表では、どの資産曲線から最大DDを計算したかも確認が必要です。

  • 残高(Balance): 決済済み取引を反映した口座残高
  • 有効証拠金(Equity): 残高に未決済ポジションの含み損益を加えた値

含み損を長く抱えるEAでは、残高曲線が滑らかでも、有効証拠金は大きく下がっていることがあります。MetaTrader 5のテスト統計にも、Balance DrawdownとEquity Drawdownが別々に定義されています。

したがって「最大DD 10%」という数字だけでは不十分です。残高ベースなのか、有効証拠金ベースなのかで、見えているリスクが異なります。

最大ドローダウンは期間で変わる

最大ドローダウンを見るときに注意したいのは、検証期間です。

短い期間のバックテストでは、大きな下落局面をたまたま含んでいない可能性があります。

例えば、相場が穏やかな2年間だけで検証したEAと、急変期を含む期間で検証したEAでは、最大ドローダウンの見え方が変わります。

もちろん、長ければ必ずよいというわけではありません。古すぎる相場環境が、現在の相場にそのまま当てはまるとも限りません。

それでも、最大ドローダウンを見るときは、少なくとも次の点を確認したいところです。

  • バックテスト期間はいつからいつまでか
  • その期間に急変相場が含まれているか
  • フォワードテストや実運用ではどの程度のドローダウンが出ているか
  • 最大ドローダウンが出た時期に何が起きていたか

最大ドローダウンは、数字だけでなく、どの期間で出た数字なのかとセットで見る必要があります。

金額と割合を区別する

例えば、100万円の口座で20万円落ち込んだ場合、最大ドローダウン率は20%です。

\(\displaystyle \frac{20}{100} = 20\%\)

一方で、1000万円の口座で20万円落ち込んだ場合、最大ドローダウン率は2%です。

\(\displaystyle \frac{20}{1000} = 2\%\)

同じ20万円の落ち込みでも、元本に対する割合が違えば印象は大きく変わります。

EA販売ページでは、最大DDが金額なのか割合なのか、割合ならどのピークを基準にしたのかを確認します。初期証拠金だけを分母にした単純な比率と、各時点のピークから計算した相対ドローダウンは同じではありません。

ロット設定で最大ドローダウンは変わる

最大ドローダウンは、ロット設定にも影響されます。

固定ロットで他の条件が同じなら、ロットを2倍にすると金額ベースの利益・損失もおおむね2倍になります。複利運用、証拠金制約、スリッページなどがある場合は、単純な比例から外れます。

そのため、販売ページに表示されている最大ドローダウンを見るときは、次の点も確認したいところです。

  • 何通貨、何ロットで検証しているか
  • 複利運用なのか、固定ロットなのか
  • 初期証拠金はいくらか
  • 推奨証拠金とバックテスト条件が対応しているか

最大ドローダウンの数字だけを見ても、ロット条件が分からないと、自分の運用額に置き換えにくいです。

EA販売ページで確認する項目

確認項目 確認する理由
金額か割合か 口座規模の違う結果を比較するため
残高か有効証拠金か 未決済の含み損が反映されているかを見るため
検証期間 急変期や異なる相場環境を含むかを見るため
固定ロットか複利か リスク量の増え方を把握するため
初期証拠金と推奨証拠金 公開値を自分の運用額へ換算するため
最大DDが出た時期 どの相場環境で崩れたかを見るため
フォワード成績 バックテスト外でも同程度かを見るため

小さい最大DDは一つの情報ですが、検証期間が短い、含み損が反映されていない、ロットが小さいといった条件でも小さく見えます。数値と計算条件を分けずに確認することが重要です。

関連記事

まとめ

最大ドローダウンは、資産の最終到達点ではなく、そこへ至る途中の最大下落を測ります。25%の下落から元へ戻るには33.3%、45%の下落なら81.8%の利益が必要です。

EA販売ページでは、最大DDの数値だけでなく、残高か有効証拠金か、検証期間、ロット設定、初期証拠金、フォワード成績を確認します。最大DDだけでEAの良し悪しは決まりませんが、勝率やPFでは見えない運用経路を補う指標になります。


詳しく確認したい方へ

販売ページを開きながら確認できる無料PDFを、筆者がGogoJungleで公開しています。

各指標をさらに詳しく確認したい方向けには、次のPDF教材を販売しています。

参考資料

コメント

タイトルとURLをコピーしました