バックテストの取引回数は何回あれば信用できるか|期間の長さでは代用できない理由

バックテストの取引回数は何回あれば信用できるか 投資・トレード

はじめに

EA(Expert Advisor。MT4/MT5などで使われる自動売買プログラム)の販売ページには、たいてい検証期間が書かれています。「10年間のバックテストで右肩上がり」という表現もよく見ます。

期間が長いほど、しっかり検証されているように見えます。

ただ、ここで一つ確認したいことがあります。その10年間で、実際に何回取引したのでしょうか。

10年分のデータを使っていても、成立した取引が30回なら、判断材料になるのは「30回分の結果」です。期間の長さは、回数の少なさを埋めてくれません。

この記事では次の3点を見ていきます。

  • 取引回数が少ないと何が起きるのか
  • 何回あれば判断材料になるのか(勝率の信頼区間から)
  • 期間と回数を分けて確認する手順

少ない回数では「たまたま」と区別がつかない

コインを10回投げて、表が7回出たとします。このコインは表が出やすいでしょうか。

おそらく多くの方が「まだ分からない」と考えるはずです。公平なコインでも、10回中7回表になることは珍しくありません。

バックテストの成績も同じ構造です。30回の取引で勝率60%だったとして、それは戦略の実力なのか、たまたまその期間でそうなっただけなのか。回数が少ないうちは区別がつきません。

数字で見る:回数と信頼区間

「勝率60%」と観測されたとき、真の勝率がどのくらいの範囲にありそうかを、取引回数ごとに計算すると次のようになります(95%信頼区間・正規近似)。

取引回数 真の勝率がありそうな範囲 区間の幅
30回 42.5% 〜 77.5% 35.1pt
50回 46.4% 〜 73.6% 27.2pt
100回 50.4% 〜 69.6% 19.2pt
300回 54.5% 〜 65.5% 11.1pt
1,000回 57.0% 〜 63.0% 6.1pt

30回のとき、範囲は42.5%〜77.5%です。「勝率42%かもしれないし77%かもしれない」という状態で、実質的に何も分かっていないのと近い状態です。

100回あたりで幅が20ptを切り、300回を超えると10ptほどに縮みます。

もちろん「何回以上なら安心」という一律の線引きはありません。ただ、幅がどれくらいかを意識すると、同じ勝率60%でも重みが違うことが見えてきます。

この考え方の詳細は同じ勝率90%でも、9勝1敗と90勝10敗は同じではないで、二項分布を使って整理しています。

期間の長さは回数の代わりにならない

販売ページで確認したいのは、期間と回数の両方です。片方だけでは判断できません。

検証期間 取引回数 読み方
10年 30回 実質サンプルは30。期間の長さは判断材料にならない
1年 30回 同上。加えて相場環境が偏っている可能性
10年 2,000回 回数も期間も十分。相場環境の変化も含んでいる
1年 2,000回 回数は十分だが、相場環境は1年分しか見ていない

期間が長いことの価値は、回数を稼ぐことではなく、異なる相場環境をまたぐことにあります。トレンド相場とレンジ相場、低ボラティリティ期と高ボラティリティ期。これらを含んでいるかどうかは、期間でしか確認できません。

一方、成績の統計的な安定性は回数で決まります。役割が違うので、どちらかで代用することはできません。

プロフィットファクターにも同じことが起きる

取引回数の影響を受けるのは勝率だけではありません。

プロフィットファクター(PF)は総利益を総損失で割った比率です。ここで分母を作るのは負けトレードの回数です。

取引が30回で、そのうち負けが5回しかなければ、総損失は5回分の合計にすぎません。そこにまだ経験していない大きな負けが1回加わるだけで、PFは大きく動きます。

つまり、取引回数が少ないときは勝率もPFも同時に不安定になります。指標を増やしても、元になっている回数が同じなら、独立した確認にはなりません。

確認の手順

販売ページを見るとき、次の順で確認すると整理しやすくなります。

  1. 取引回数が明記されているか — 書かれていなければ、まずそこを質問する
  2. 回数と期間を分けて見る — 「10年」ではなく「10年で何回か」
  3. 負けトレードの回数 — PFや最大損失の信頼性はここで決まる
  4. 1年あたりの取引頻度 — 極端に少ない場合、条件が厳しすぎて実運用で機会が来ない可能性

取引回数が少ないEAが悪い、という話ではありません。回数が少ないなら、その分だけ数字を幅を持って読むというだけのことです。幅を持って読めば、判断を誤る確率は下がります。

まとめ

  • 期間の長さと取引回数は別物で、互いに代用できない
  • 30回では勝率の推定範囲が35pt幅になり、実質的に判断材料として弱い
  • 100回で20pt、300回で11pt程度まで幅が縮む
  • PFも負けトレードの回数に依存するため、回数が少ないと勝率と同時に不安定になる
  • 期間は「相場環境の多様さ」、回数は「統計的な安定性」を担う

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確認手順を手元に置きたい方へ

取引回数を含む5つの確認項目は、筆者が作成した無料PDF「EA販売ページ 5分チェックリスト」(GogoJungle・0円)に、記入式のチェック表と販売者への質問テンプレート6問としてまとめています。

取引回数・損失感度・フォワード成績を合わせてPFを読む手順は「「プロフィットファクター 7.8」をどう見るか?」で、試行回数による成績の膨らみを統計的に補正する方法は「「シャープレシオ 4.51」は高いのか?」で扱っています(いずれも筆者作成のPDF教材です)。

※本記事は特定のEA・商品の購入可否を示すものではありません。数値例はすべて説明のための架空の例です。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

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